先に結論
中小M&A支援の倫理・行動規範は、中小企業庁が2025年4月に公表した「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」に、合計48項目として整理されています。新資格の試験科目は検討会資料の現状案にとどまりますが、支援の現場で守るべき行動の基準そのものはすでに公表済みです。学ぶ順番は、48項目の丸暗記ではなく、区分の意味と自分の関与場面から入るのが現実的です。
この記事の結論
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倫理・行動規範は試験のために作られたルールではなく、支援業務そのものの基準。まず読むべき公表資料は中小企業庁のスキルマップ資料と中小M&Aガイドライン第3版の2つで、どちらも無料で読める。
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スキルマップ資料の倫理・行動規範は合計48項目。区分として、基本原則/善管注意義務・職業倫理/広告・営業/品位/法令等の遵守/不適切な個人・組織、反社等との関係/情報管理/その他禁止行為の名称が現れる。
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最も多くの項目が置かれているのは善管注意義務・職業倫理で、善管注意義務、支援の質の向上、顧客利益の優先、利益相反の防止、報告義務などの小分類を含む。
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利益相反の防止は「仲介者が対象」と明示された小分類。仲介とFAでは重心の置きどころが変わる。
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効率のよい順番は「名称の意味 → 具体的な項目 → 自分の場面」。項目番号から入ると、実務での判断に使えない知識になりやすい。
公表されている倫理・行動規範の全体像(最終確認日:2026-09-07)
| 資料に現れる区分 | 資料に挙げられている小分類 | 主に問われる場面(当メディアによる整理) |
|---|---|---|
| 基本原則 | 小分類の区分なし | すべての場面の土台。信義・公正・誠実に業務を行うという出発点 |
| 善管注意義務・職業倫理 | 善管注意義務/支援の質の向上/顧客利益の優先/利益相反の防止(仲介者が対象)/報告義務/その他 | 受任前の説明、契約条件の提示、進捗報告、譲渡先の選定 |
| 広告・営業 | 虚偽・誤解を与える文言使用の禁止/不適切な営業活動の禁止 | 提案資料、ウェブ広告、飛び込み・電話での営業 |
| 品位 | 品位の保持/品位を損なう行為の禁止 | 相手方や他の支援機関への言及、日常のふるまい |
| 法令等の遵守 | 法令等の遵守 | 業法・個人情報・下請取引など、案件に付随する法令の確認 |
| 不適切な個人・組織、反社等との関係 | 小分類は区分名と同じ | 相手方の確認、反社会的勢力の排除、取引の中止判断 |
| 情報管理 | 情報の取り扱い/関係者の指導監督/不適切行為の禁止 | 資料の受け渡し、社内共有、外部専門家への開示 |
| その他禁止行為 | 小分類は区分名と同じ | 個別の禁止条項に当たらないが不適切と認められる行為 |
区分と小分類の名称は、中小企業庁「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」(2025年4月)および同事業の調査報告書の表記に基づき、2026-09-07に確認しました。合計48項目という点は両資料で一致しています。なお、上の8つの名称が資料上すべて同じ階層に置かれているのか、一部が下位の区分なのかは資料の表からは読み取り方が分かれます。当メディアでは区分の個数を断定せず、名称のみを一覧にしています。各区分に属する項目数の内訳と正確な階層は資料本体でご確認ください。3列目は当メディアによる実務上の整理で、資料の記載ではありません。
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「資格より先に基準がある」という順番を押さえる
中小M&A支援では、行動の基準のほうが資格より先に公表されています。中小M&Aガイドラインは2020年3月の策定後、2023年9月の第2版を経て、現行は2024年8月改訂の第3版です。第3版では、提供する業務の内容・質と手数料について中小企業が確認すべき事項の解説、仲介者・FAに対して求められる説明についての追記、営業・広告に係る規律の明記、仲介者において禁止される利益相反事項の具体化、最終契約における当事者間のトラブルに発展する可能性があるリスクとその対応策の解説、不適切な譲り受け側を市場から排除するための対応、経営者保証の扱いなどが盛り込まれました。
その翌年、2025年4月に公表されたのが、個人を対象とするスキルマップ資料です。ガイドラインが機関としての業務のやり方を定めるのに対し、こちらは中小M&Aに関わる個人を広く対象とし、仲介者・FA等の業態を限定しない形で、使命・倫理・行動規範と、知識・スキルの体系を示しています。知識は M&A実務・ビジネス・会計・法務・税務・情報 の6分類、スキルは対業務・対関係者の2分類で整理され、事前相談、バリュエーション、マッチング、基本合意、DD、最終契約、クロージング、クロージング後(PMI)というプロセスの段階に沿って配置されています。
新資格については、検討会資料に試験科目の現状案が示されている段階です。同資料には、来年度以降の試験実施に向けた現状案であり、試験案内等で公表する際には変更が生じうる旨が明記されています。正式名称・試験日・受験料は未公表です。最新の公表状況は試験情報で確認できます。一方で、いま挙げた2つの資料はすでに公表されています。
学習用に4つのかたまりで押さえる
以下の4つのかたまりは、学習の順番を作るために当メディアが整理したもので、資料上の階層ではありません。
1. 依頼者との関係(基本原則・善管注意義務・職業倫理)
48項目の中で最も多くの項目が置かれている部分です。顧客利益の優先、利益相反の防止、報告義務といった小分類が並びます。ここで問われるのは知識よりも判断で、「依頼者の利益と自分の報酬が食い違う場面で、どちらを選ぶか」が典型です。特に利益相反の防止は仲介者が対象と明示されており、売り手・買い手の双方と契約する構造そのものが論点になります。仲介とFAの違いはM&A仲介・FAの資格事情で整理しています。
2. 外に向けた表現(広告・営業・品位)
虚偽・誤解を与える文言の使用禁止、不適切な営業活動の禁止、品位の保持が含まれます。実績の見せ方、他社との比較表現、初回接触の方法など、案件が始まる前の行動が対象です。ガイドライン第3版で営業・広告に係る規律が明記されたこととあわせて読むと、何が問題視されているのかがつかめます。
3. 相手を選ぶ判断(法令等の遵守・不適切な個人・組織、反社等との関係)
案件を受けるか、続けるか、止めるかの判断に直結します。第3版に不適切な譲り受け側を市場から排除するための対応が盛り込まれた流れと同じ方向を向いており、支援機関が誰と仕事をするかも規範の対象だという整理です。
4. 情報の扱いと受け皿の条項(情報管理・その他禁止行為)
情報の取り扱い、関係者の指導監督、不適切行為の禁止が含まれます。中小M&Aは秘密保持が案件の前提になるため、自分だけでなく社内の関係者をどう管理するかまでが範囲に入ります。「その他禁止行為」は、個別条項に当てはまらなくても不適切と認められる行為を対象とする受け皿です。ここがあるため、条文の網羅より趣旨の理解が効きます。
場面から引く早見表
| 実務の場面 | 主に効いてくる区分 | 先に読む資料 |
|---|---|---|
| 初回相談を受けた直後 | 善管注意義務・職業倫理 | ガイドライン第3版(仲介者・FAに求められる説明) |
| 仲介契約・アドバイザリー契約の締結 | 善管注意義務・職業倫理(利益相反の防止) | ガイドライン第3版(仲介者において禁止される利益相反事項) |
| 手数料の提示・説明 | 善管注意義務・職業倫理 | ガイドライン第3版(業務の内容・質と手数料) |
| 提案資料・ウェブ広告の作成 | 広告・営業 | ガイドライン第3版(営業・広告に係る規律) |
| 譲り受け側の選定・確認 | 不適切な個人・組織、反社等との関係 | ガイドライン第3版(不適切な譲り受け側の排除) |
| 資料の共有・保管 | 情報管理 | スキルマップ資料(情報の取り扱い・関係者の指導監督) |
| 進捗の報告 | 善管注意義務・職業倫理(報告義務) | スキルマップ資料 |
学習として使うなら、この表を左から右ではなく、右から左に使うのが実践的です。資料を読んで「これはどの場面の話か」を言えるようにしておくと、実務で判断を求められたときに動けるようになります。学習の進め方は中小M&A資格の勉強方法にまとめています。
注意点・よくある失敗
- 士業としての職業倫理を身につけているから大丈夫だと考える(税理士法・会計士法などの職業倫理と、中小M&A支援に求められる行動規範は範囲が異なります)。
- 48項目を項目番号で暗記しようとする(区分と小分類の意味を先に押さえたほうが、場面への当てはめが速くなります)。
- 利益相反を仲介だけの論点と思い込み、FAでの善管注意義務や情報管理を薄く扱う。
- ガイドラインの版を確認せずに社内手順を作る(現行は第3版で、2024年8月の改訂です)。
- 広告・営業の規律を営業担当だけの話として扱う(提案資料の表現も対象になります)。
- 検討中の事項を確定した制度として顧客や社内に説明する(新資格の試験科目は検討会資料上の現状案です)。
- 公表資料を読まずに市販の解説だけで済ませる(一次資料は無料で公開されており、表現の細かな違いがそのまま判断の分かれ目になります)。
比較軸をそろえると、判断理由を説明しやすくなります
選ぶ前に条件を確認することで、料金や印象だけで結論を急ぐことを避けられます。
制度・料金・提供内容は更新されます
本記事の数値・制度情報は記載の確認日時点のものです。申込前に各公式ページで最新情報をご確認ください。
よくある質問
中小企業庁が2025年4月に公表した「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」に、合計48項目として整理されています。中小M&Aガイドライン第3版のページから辿れます。
ガイドラインは支援機関としての業務のやり方を定めるもの、スキルマップ資料は中小M&Aに関わる個人を対象に、使命・倫理・行動規範と知識・スキルの体系を示すものです。実務の手順を確認するならガイドライン、自分に足りない知識やスキルを棚卸しするならスキルマップ資料から入ると迷いません。
スキルマップ資料では、利益相反の防止は「仲介者が対象」と明示された小分類です。ただし善管注意義務、顧客利益の優先、報告義務、情報管理といった他の項目はFAにも共通して関わります。仲介とFAで重心は変わりますが、規範の対象から外れるわけではありません。
自分が関わる場面に近い区分からで構いません。仲介・FAとして受任する立場なら善管注意義務・職業倫理、外部への発信を担当するなら広告・営業、案件を受けるかどうかを判断する立場なら不適切な個人・組織、反社等との関係が入口になります。どこから読んでも、最後は自分の場面に当てはめられるかどうかが基準です。
公表されていません。検討会資料には試験科目の現状案が示されていますが、同資料自体に今後変更が生じうる旨が明記されており、正式名称・試験日・受験料も未公表です。最新の公表状況は本体サイトの試験情報で確認してください。
一次資料・参考資料
- 一次資料中小企業庁「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」(2025年4月・中小企業庁事業環境部財務課)確認日:2026-09-07
- 一次資料中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月改訂)確認日:2026-09-07
- 一次資料中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」本文(令和6年8月・139頁)確認日:2026-09-07
- 一次資料中小企業庁(委託:PwCコンサルティング合同会社)「令和6年度中小企業活性化・事業承継総合支援事業(中小M&Aに係る資格に関する調査事業)調査報告書」(令和7年3月)確認日:2026-09-07
- 一次資料中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた検討会(第4回)」(令和8年3月17日開催)確認日:2026-09-07
更新・訂正履歴
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記載の数値・制度情報は2026-09-07時点で一次資料・公式情報を確認したものです。更新・訂正時はこの履歴に日付と理由を記載します。
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