先に結論
税理士資格を持たない会計事務所・税理士事務所の職員でも、M&A・事業承継の資格は受けられます。受験資格のない金融業務3級・2級などの検定に加え、会計事務所等で1年以上の実務経験があり現在も在籍中なら事業承継シニアエキスパート、5年以上ならM&Aシニアエキスパートの受講資格に届きます。ただし、資格を取っても税務相談ができるようになるわけではありません。下の表に自分の勤続年数を当てはめてください。
この記事の結論
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金融財政事情研究会の上位2講座には「会計事務所等」ルートがあり、事業承継シニアエキスパートは1年以上、M&Aシニアエキスパートは5年以上の実務経験と「現在も在籍中」であることが条件。税理士資格は求められていない。
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勤続年数が足りなくても、受験資格の制限がない金融業務2級 事業承継・M&Aコース(7,700円)に合格すれば、事業承継・M&Aエキスパートの認定で両講座の受講資格を満たす。
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事業承継協会の事業承継士は、国家資格などの専門スキル保有者が受講の原則とされている。税理士資格のない職員が最初に選ぶ資格ではない。
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中小企業庁の検討会資料は、仲介・FA業務が「税理士法第52条等」の独占業務に抵触しないことを前提とし、試験の合格は独占業務の実施を可能とするものではないと明記している。資格は税務の判断を職員に許すものではない。
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国の新しい試験の募集要領は、「士業等専門家」などの支援機関に所属して仲介・FA業務に関わる者と、今後その業務を行おうとする者を主な受験対象としている。士業資格の保有は条件として書かれていない。ただし受験資格は未公表。
「会計事務所等」ルートの条件
金融財政事情研究会のKINZAI Webアカデミーで案内されている上位2講座は、受講資格のいずれかに該当する人だけが申し込めます。会計事務所の職員に関係するルートの原文は次のとおりです。
- 事業承継シニアエキスパート:「会計事務所等で1年以上の実務経験があり、現在も在籍中の方」
- M&Aシニアエキスパート:「会計事務所等で5年以上の実務経験があり、現在も在籍中の方」
どちらのルートにも、税理士・公認会計士の資格を持っていることは条件として書かれていません。税理士・公認会計士は別の項(「弁護士・税理士・公認会計士・司法書士」)で独立して挙がっており、資格のある人は資格のルート、資格のない職員は「会計事務所等」の実務経験ルートで受講資格を満たす形になっています。
| 比べる点 | 事業承継シニアエキスパート | M&Aシニアエキスパート |
|---|---|---|
| 会計事務所等ルートの年数 | 実務経験1年以上 | 実務経験5年以上 |
| 在籍の条件 | 現在も在籍中 | 現在も在籍中 |
| 年数なしで入れる検定ルート | 事業承継・M&Aエキスパート認定者(金融業務2級の合格) | 事業承継・M&Aエキスパート認定者/事業承継シニアエキスパート認定者 |
| 学ぶ中心 | 相続税・贈与税・財産評価・事業承継税制・自社株対策など親族内承継 | 第三者承継の実務・企業評価・M&A会計・税務・法務 |
| 費用(税込・一般区分) | 受講料132,000円+受験料11,000円=143,000円 | 受講料132,000円+受験料11,000円=143,000円 |
| 認定試験 | CBT・四答択一式50問・120分・100点満点で60点以上 | Web版はCBT・四答択一式50問・120分・100点満点で60点以上 |
| 受講期間(Web講義) | 決済完了日から13週間(91日間) | 決済完了日から13週間(91日間) |
確認した案内には、「会計事務所等」の「等」がどこまでを含むか(税理士法人、個人の税理士事務所、記帳代行会社などの扱い)や、「実務経験」に数える業務の範囲は定義されていません。また、複数の事務所での経験を通算できるかも書かれていません。勤務先の形態が会計事務所と呼べるか迷う場合や、転職を挟んでいる場合は、申し込む前に運営団体へ確認してください。
比べた条件のまま、いまの理解度を無料で確認できます。
講座や検定に申し込む前に、国の新しい試験の科目で自分の得意と弱点を20問で確かめられます(当メディア運営者が提供するサービスです)。
勤続年数×取れる資格
税理士資格を持たない職員が、勤続年数ごとにどの資格へ申し込めるかを整理しました。「受験資格の制限がない検定」はいつでも受けられ、上位講座は年数か検定合格のどちらかで受講資格を作ります。
| 勤続年数(会計事務所等での実務経験) | 受験資格の制限がない検定 | 事業承継シニアエキスパート | M&Aシニアエキスパート |
|---|---|---|---|
| 1年未満 | 金融業務3級・2級、事業承継アドバイザー3級、M&Aスペシャリスト | 会計事務所等ルートでは未達。金融業務2級の合格で認定者ルート | 会計事務所等ルートでは未達。金融業務2級の合格で認定者ルート |
| 1年以上5年未満 | 同上 | 会計事務所等ルートで受講可(現在も在籍中が条件) | 会計事務所等ルートでは未達。金融業務2級の合格、または事業承継シニアエキスパートの認定で受講可 |
| 5年以上 | 同上 | 受講可 | 会計事務所等ルートで受講可(現在も在籍中が条件) |
| 退職・他業種へ転職した | 同上 | 「現在も在籍中」を満たさないため会計事務所等ルートは不可。認定者ルートを使う | 同左 |
表のとおり、年数が足りない時期の打ち手は金融業務2級です。受験資格の制限がなく、合格で得られる事業承継・M&Aエキスパートの認定は両講座の受講資格の第1項に挙がっています。一方、金融業務3級の公式ガイドには「『金融業務3級 事業承継・M&Aコース』の合格(事業承継・M&Aベーシックの認定)は、『M&Aシニアエキスパート養成スクール(認定講座)』『事業承継シニアエキスパート養成スクール(認定講座)』の受講資格とはなりません。」と明記されています。上位講座を目指すなら、3級を経由する必要はありません。
M&Aシニアエキスパートの受講資格には「事業承継シニアエキスパート認定者」も挙がっています。勤続1〜4年目なら、事業承継シニアエキスパートを会計事務所等ルートで受講し、その認定でM&Aシニアエキスパートへ進む順路も取れます。講座の詳細は事業承継シニアエキスパートの費用と受講資格とM&Aシニアエキスパートの費用と受講資格で扱っています。自分がどこから入るかを決めたら、新しい試験の科目で弱い分野を無料の20問診断で確かめておくと、講座と並行して補う範囲が絞れます(当メディア運営者が提供する無料サービスです)。
資格を持たない職員でも受けられる検定
受験資格の制限がない検定と、受講条件のある資格を並べると次のとおりです。
| 資格・検定 | 職員が申し込めるか | 費用(税込) | 合格・取得の条件 |
|---|---|---|---|
| 金融業務3級 事業承継・M&Aコース | 受験資格は特にない | 5,500円 | 100分・四答択一式50問・100点満点で60点以上 |
| 金融業務2級 事業承継・M&Aコース | 受験資格は特にない(対象者欄に「公認会計士・税理士等」と並ぶが、条件ではない) | 7,700円 | 120分・四答択一式30問+総合問題10題・100点満点で70点以上 |
| 事業承継アドバイザー3級 | どなたでも受験可能 | 5,500円+事務手数料330円 | 120分・四答択一式50問・100点満点中60点以上 |
| M&Aスペシャリスト | 受験資格の制限はない | 検定試験料11,000円(入会費用は計38,000円でその内数、年会費33,000円) | 一般知識問題と論述問題・120分・60%以上の正解。合格後に入会申請と資格審査委員会の審査 |
| 事業承継士 | 国家資格などの専門スキル保有者が受講の原則 | 受講料330,000円+受験料9,900円+入会金11,000円 | 資格取得講座(全30時間)の受講が前提 |
事務所内で最初に取りやすいのは、受験資格がなくCBTで通年受けられる金融業務3級・2級です。事業承継の相談を受け始めたばかりなら3級、自社株評価や事業承継税制に日常的に触れていて上位講座も視野にあるなら2級から入るのが無理のない順番です。M&Aスペシャリストは受験資格の制限がないものの、資格の付与が入会と一体で年会費が続くため、維持費まで含めて判断してください。
事業承継士は、協会の資格取得講座ページが受講対象を、中小企業診断士・税理士・公認会計士などの国家資格などの専門スキル保有者が原則と記載しています。税理士資格のない職員が最初に検討する資格ではありません。各資格の詳細は金融業務3級、金融業務2級、M&Aスペシャリスト、事業承継士の各記事で扱っています。
資格を取っても税務相談はできない
中小企業庁の「中小M&A市場の改革に向けた検討会」(第4回)資料2は、新しい試験の前提として次のように記しています。
国の新しい試験ですら、合格しても士業の独占業務を行えるようにはならないと明記されています。民間の検定や認定も同じで、事業承継シニアエキスパートやM&Aシニアエキスパートの認定を受けたからといって、税理士資格のない職員が税務相談に応じられるようになるわけではありません。
会計事務所の職員にとって、この点は資格選びより先に押さえておくべき前提です。顧問先の経営者から「自社株の評価はいくらになるか」「事業承継税制を使うといくら税金が減るか」と聞かれたとき、資格の有無にかかわらず、税務の判断を職員が単独で答えることを資格が正当化するわけではありません。どこまでが税理士の業務に当たるかは、所属事務所の税理士に確認したうえで役割を分けてください。
事務所で職員が担える支援の範囲
資格の知識が活きるのは、税務の判断そのものではなく、その手前と周辺です。事務所内での役割分担を考える際の整理を示します。
| 場面 | 職員が資格の知識を活かせること | 税理士の確認・判断に回すこと |
|---|---|---|
| 承継・M&Aの相談の入口 | 経営者の意向を聞き、親族内承継か第三者承継かなど論点を整理する | 税負担の見通しや税務上の選択肢についての回答 |
| 資料の準備 | 決算書・株主構成・不動産などの資料を集め、整理する | 自社株評価や財産評価の結論 |
| M&Aのプロセス説明 | 仲介・FAの違い、契約までの流れ、手数料の説明を受ける際の確認点を、中小M&Aガイドラインに沿って伝える | 個別の税務スキームの提案 |
| 外部の支援機関とのやりとり | 支援機関から求められる資料の手配や日程の調整 | 税務デューデリジェンスや税務上の意見 |
| 事務所としての方針 | 承継相談の受付窓口や相談票の整備 | 仲介・FA業務を事務所として行うかの判断 |
中小M&Aガイドライン(第3版)は、士業等専門家として税理士に個別の節(115頁〜)を設けています。事務所として担う支援の範囲は、まずこの節を事務所内で共有すると整理しやすくなります。なお、中小企業庁のM&A支援機関登録制度は、機関(法人・個人事業主)単位の登録で、個人の資格ではありません。職員が資格を取ることと、事務所が支援機関として登録することは別の手続きです。士業本人の資格戦略は税理士・会計士のM&A資格、登録制度の対象はM&A支援機関登録制度と資格の違いで整理しています。
新しい試験の対象想定に「士業等専門家」
中小企業庁が運営主体となる中小M&A資格試験について、試験実施事業の企画競争募集要領(2026年3月27日)は、想定される受験者を次のように書いています。
書かれているのは支援機関に「所属する仲介・FA業務に関わる者」と「今後中小M&Aの仲介・FA業務を行おうとする者」で、士業資格を持っていることは条件として書かれていません。検討会(第4回)資料2も、同じく「今後中小M&Aの仲介・FA業務を行おうとする者」を主な受験対象に含めています。ただし、これらは誰を想定した試験かを述べたもので、受験資格そのものは2026年10月3日時点で公表されていません。試験日・受験料・申込方法・正式名称も未公表です(試験実施事業の委託先は株式会社銀行研修社。2026年5月1日公表)。
試験は全国の会場でCBT方式、4科目をまとめて120分、設問数は合計で最大60問程度と想定されています。検討会資料の配点の想定は、M&A実務35〜40%程度、倫理・行動規範25%程度、財務・税務20〜23%程度、法務17〜18%程度です。会計事務所の職員は財務・税務に強みがあっても、配点の大きいM&A実務と倫理・行動規範に業務での接点が少ないことがあります。既存の資格を持っていれば新しい試験が免除・優遇されるという記載は、確認できた公表資料には見当たりません。新試験の科目での現在地は無料の20問診断で測れます(当メディア運営者が提供する無料サービスです)。
注意点・よくある失敗
- 資格を取れば顧問先の税務相談に応じられると考える。検討会資料は、試験の合格が独占業務の実施を可能とするものではないと明記しています。
- 「会計事務所等」の範囲を自己判断する。確認した案内に定義はないため、勤務先の形態に迷うときは運営団体へ確認します。
- 転職や退職のあとに申し込もうとする。会計事務所等ルートは「現在も在籍中」が条件です。
- 金融業務3級に合格すれば上位講座に進めると考える。受講資格になるのは金融業務2級の合格で得られる認定です。
- 事業承継士を最初の資格に選ぶ。受講対象は国家資格などの専門スキル保有者が原則とされています。
- 職員の資格取得を、事務所の支援機関登録と同じものと考える。登録制度は機関単位です。
比較軸をそろえると、判断理由を説明しやすくなります
選ぶ前に条件を確認することで、料金や印象だけで結論を急ぐことを避けられます。
制度・料金・提供内容は更新されます
本記事の数値・制度情報は記載の確認日時点のものです。申込前に各公式ページで最新情報をご確認ください。
よくある質問
会計事務所等で5年以上の実務経験があり、現在も在籍中であれば、受講資格のルートに該当します。5年未満の場合は、金融業務2級 事業承継・M&Aコースに合格して事業承継・M&Aエキスパートの認定を得るか、事業承継シニアエキスパート(会計事務所等で1年以上)の認定を得ると受講資格を満たします。
確認した公式案内には「会計事務所等」の範囲の定義がありません。勤務先の形態が該当するかは、申し込む前に運営団体へ確認してください。確実に進めたい場合は、金融業務2級の合格による認定者ルートがあります。
資格を取っても税務相談ができるようになるわけではありません。中小企業庁の検討会資料は、国の新しい試験についてさえ、合格は既存の業法に基づく独占業務の実施を可能とするものではないとしています。税務の判断は事務所の税理士が行う前提で、職員は論点の整理や資料の準備などで知識を活かす形になります。
受験資格の制限がなく通年で受けられる金融業務3級 事業承継・M&Aコース(5,500円)が入口として使いやすい検定です。1〜2年のうちに上位講座へ進ませる予定があるなら、受講資格につながる金融業務2級(7,700円)から入るほうが回り道になりません。
受験資格は未公表です。募集要領は主な受験対象に、「士業等専門家」などの支援機関に所属して仲介・FA業務に関わる者と、今後その業務を行おうとする者を挙げており、士業資格の保有は条件として書かれていません。ただしこれは想定であり、受験の条件として示されたものではありません。公表を待つあいだに、無料の20問診断で新試験の科目での現在地を確かめておけます(当メディア運営者が提供する無料サービスです)。
「現在も在籍中」が条件になっているのは受講資格のルートで、認定後の扱いではありません。認定の有効期限や更新の扱いは、確認した公式案内に記載がありませんでした。退職を予定している場合は、在籍中に受講資格を満たして申し込む計画にしておくのが確実です。
一次資料・参考資料
- 公式情報金融財政事情研究会 KINZAI Webアカデミー 事業承継シニアエキスパート(受講資格・受講料・受験料・試験形式・受講期間)確認日:2026-10-03
- 公式情報金融財政事情研究会 KINZAI Webアカデミー M&Aシニアエキスパート(受講資格・受講料・受験料・試験形式・受講期間)確認日:2026-10-03
- 公式情報金融財政事情研究会 種目別ガイド 金融業務3級 事業承継・M&Aコース(受講資格とはならない旨)確認日:2026-10-03
- 公式情報金融財政事情研究会 種目別ガイド 金融業務2級 事業承継・M&Aコース(試験の対象者・受験資格)確認日:2026-10-03
- 公式情報銀行業務検定試験 事業承継アドバイザー3級(CBT-Solutions 受験者ポータル)確認日:2026-10-03
- 公式情報日本経営管理協会 M&Aスペシャリスト確認日:2026-10-03
- 公式情報一般社団法人事業承継協会 資格取得講座確認日:2026-10-03
- 一次資料中小企業庁 中小M&A市場の改革に向けた検討会(第4回)資料2(2026年3月17日)確認日:2026-10-03
- 一次資料中小企業庁 令和7年度補正 中小M&A資格試験実施事業 企画競争募集要領(2026年3月27日。令和8年度試験が初回)確認日:2026-10-03
- 一次資料中小企業庁 中小M&A資格試験実施事業 委託先の採択結果(2026年5月1日)確認日:2026-10-03
- 一次資料中小企業庁 中小M&Aガイドライン(第3版)確認日:2026-10-03
- 一次資料M&A支援機関登録制度確認日:2026-10-03
更新・訂正履歴
- 初回公開
記載の数値・制度情報は2026-10-03時点で一次資料・公式情報を確認したものです。更新・訂正時はこの履歴に日付と理由を記載します。
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