現在地キャリア
職種・キャリア

社労士のM&A資格の選び方。事業承継士と2級ルート

結論を先に示し、根拠・比較・関連する疑問・一次資料の順に確認できます。

Answer first結論

先に結論

社労士(社会保険労務士)がM&A・事業承継の資格を選ぶなら、入口は2つです。受講対象に社会保険労務士が明記されている事業承継士と、受験資格の制限がない金融業務2級 事業承継・M&Aコース(7,700円)です。金融財政事情研究会の2つのシニアエキスパート講座は士業ルートに社労士が含まれないため、2級に合格して認定者ルートで進みます。まず下の判断表で目的と予算を決めてください。

Key takeaways

この記事の結論

  1. 01

    事業承継協会の資格取得講座ページは、事業承継士の受講対象に「社会保険労務士」を挙げている。社労士は士業として正面から申し込める(取得時の合計350,900円・税込)。

  2. 02

    金融財政事情研究会のM&Aシニアエキスパートの士業ルートは弁護士・税理士・公認会計士・司法書士、事業承継シニアエキスパートはこれに中小企業診断士を加えた5士業で、どちらにも社労士は入っていない。社労士は2級合格で得る「事業承継・M&Aエキスパート」の認定者ルートで進むのが基本になる(通しで150,700円)。

  3. 03

    金融業務3級の合格は上位講座の受講資格にならないと公式ガイドに明記されている。3級から始めて上位を目指すなら、2級までを1つの行程として見積もる。

  4. 04

    国の新しい中小M&A資格試験は、受験者の想定に「士業等専門家」を含むが、受験資格・試験日・受験料は2026年10月3日時点で未公表。想定されている4科目の名前に労務は入っていない。

  5. 05

    どの資格に合格しても、社労士の業務範囲そのものは変わらない。検討会資料には「本資格試験の合格は、既存の業法に基づく独占業務の実施を可能とするものではない」と明記されている。

01

社労士が申し込める資格・申し込めない資格(最終確認日:2026-09-19)

M&A・事業承継の資格は「誰でも受けられる検定」と「受講資格を問う講座型」に分かれます。社労士の立場から、それぞれに正面から申し込めるかを公式の記載で並べました。

資格社労士の扱い根拠となる公式の記載取得時の費用(税込)
事業承継士士業として受講対象事業承継協会の資格取得講座ページの受講対象一覧に「社会保険労務士」受講料330,000円+受験料9,900円+入会金11,000円=350,900円
事業承継シニアエキスパート士業ルートでは不可。2級の認定者ルートなどで可士業ルートは弁護士・税理士・公認会計士・司法書士・中小企業診断士Web講義132,000円+受験料11,000円
M&Aシニアエキスパート士業ルートでは不可。2級の認定者ルートなどで可士業ルートは弁護士・税理士・公認会計士・司法書士受講料132,000円+受験料11,000円(一般区分)
金融業務2級 事業承継・M&Aコース制限なし「受験資格は特にありません」7,700円
金融業務3級 事業承継・M&Aコース制限なし。ただし上位講座の受講資格にはならない「受験資格は特にありません」5,500円
事業承継アドバイザー3級制限なし「どなたでも受験可能」5,500円+事務手数料330円
M&Aスペシャリスト制限なし。合格後に入会申請と資格審査受験資格の制限なし入会費用38,000円(検定試験料11,000円を含む)。年会費33,000円
中小M&A資格試験(創設予定)受験資格は未公表募集要領の受験者の想定に「士業等専門家」未公表(有償を想定)

費用の桁は、1万円未満の検定、15万円前後のシニアエキスパート、35万円規模の事業承継士の3つに分かれます。士業向けに見える講座型のうち、社労士を名指ししているのは事業承継士だけです。各資格の受験条件を横断で確認したい場合はM&A資格の受験資格の比較にまとめています。

比較のあとに

比べた条件のまま、いまの理解度を無料で確認できます。

中小M&A資格が自分に合うか確認する

講座や検定に申し込む前に、労務以外の財務・税務・法務・倫理のどこが弱いかを20問で確認できます(当メディア運営者が提供するサービスです)。

02

社労士がシニアエキスパートに進む道

金融財政事情研究会のシニアエキスパート講座は、受講資格のいずれか1つに当てはまれば申し込めます。M&Aシニアエキスパートは6つ、事業承継シニアエキスパートは5つのルートがあり、士業以外の主なルートは次のとおりです。

  • 事業承継・M&Aエキスパート認定者(金融業務2級の合格者)。M&Aシニアエキスパート側は事業承継シニアエキスパート認定者も含む
  • 銀行・信用金庫・信用組合・証券会社・生命保険会社で法人営業経験があり、現在も在籍中の方(M&Aシニアは5年以上、事業承継シニアは1年以上)
  • 会計事務所等で実務経験があり、現在も在籍中の方(M&Aシニアは5年以上、事業承継シニアは1年以上)
  • 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
  • 一般社団法人M&A支援機関協会会員役職員(M&Aシニアエキスパートのみ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士を併せ持っている社労士なら、そのルートで申し込めます。金融機関や会計事務所等に勤めている社労士は、在籍要件と年数を満たすかを確認します。社労士事務所が「会計事務所等」に含まれるかどうかは、確認した案内からは判断できませんでした。該当すると考える場合は、申し込む前に金融財政事情研究会へ確認してください。

どのルートにも当てはまらない場合の道筋は1本です。

  1. 金融業務2級 事業承継・M&Aコースを受験する(7,700円・CBT通年・120分・四答択一式30問+総合問題10題・100点満点で70点以上)。
  2. 合格で「事業承継・M&Aエキスパート」の認定を得る(合否は試験終了後にその場でスコアレポートが手交される)。
  3. 親族内承継の税務を深めるなら事業承継シニアエキスパート、第三者承継の実務を深めるならM&Aシニアエキスパートを選ぶ。
  4. 講義を受講し、修了後に認定試験を受ける(Web版の受講期間は決済完了日から13週間)。
  5. 一般区分の総額は2級7,700円+受講料132,000円+受験料11,000円=150,700円になる。

金融業務3級の公式ガイドには「『金融業務3級 事業承継・M&Aコース』の合格(事業承継・M&Aベーシックの認定)は、『M&Aシニアエキスパート養成スクール(認定講座)』『事業承継シニアエキスパート養成スクール(認定講座)』の受講資格とはなりません。」と書かれています。2級の出題分野と難しさは金融業務2級 事業承継・M&Aコースの記事で整理しています。いまの知識で2級に届きそうかを先に見ておきたい場合は、無料の20問診断で承継・M&A分野の現在地を確かめられます(当メディア運営者が提供する無料サービスです)。

03

労務の強みと、試験が問う領域のずれ

公表されている科目名や講座の科目を並べると、労務が独立した柱になっている資格は見当たりません。

資格・試験公表されている科目・分野の構成労務に関する記載
中小M&A資格試験(想定)M&A実務21〜24問程度・財務・税務12〜14問程度・法務10〜11問程度・倫理・行動規範15問程度科目名に労務はない
金融業務2級 事業承継・M&Aコース事業承継関連税制等・事業承継関連法制等・M&A基礎知識・関連会計・M&A関連法制等・総合問題分野名に労務はない
事業承継士の講座(全30時間)事業承継概論、株式と経営権/財産権、相続と争族防止、ケーススタディなど「後継者のための労務管理」が1時間
M&Aシニアエキスパートの講義M&A実務1・M&A実務2・M&A評価、会計・税務の3区分区分名に労務はない

この表から言えるのは、社労士の得意分野がそのまま得点源になる試験は見当たらない、ということです。準備の時間が向かう先は、財務・税務・企業評価・会社法まわりの法務になります。逆に言えば、社労士がこれらの資格で学ぶ価値は「自分の専門の外側を埋める」点にあります。

承継やM&Aでは、従業員の処遇など人事・労務の整理が話題に上る場面もあり得ますが、本記事は個別の法令の扱いには立ち入りません。押さえたいのは、労務の相談に応じられることと、案件全体(株式・税務・企業評価・契約)を理解して他の専門家と話が通じることは別の力だという点です。

  • 労務の論点:社労士としての専門性で対応する領域
  • 株式の集約や相続の論点:事業承継士の講座、事業承継シニアエキスパートが扱う領域
  • 企業評価や会計・税務の論点:M&Aシニアエキスパート、金融業務2級が扱う領域
  • 支援者としての倫理や行動規範:新しい国の試験で15問程度が想定されている領域
  • 自分で引き受けるか、他の専門家につなぐかの判断:どの資格でも、最後は自分の業務範囲で決まる領域
04

目的×資格×費用×条件で決める判断表(最終確認日:2026-09-19)

「どれが一番よいか」ではなく、「何のために取るか」で候補が変わります。社労士の立場で考えられる目的ごとに、資格・費用・条件を1行にまとめました。

目的候補の資格取得時の費用(税込)社労士が満たすべき条件
顧問先の承継相談に、親族内承継から計画づくりまで応じたい事業承継士350,900円(教室コースの早期割引が適用されれば339,900円)+年会費11,000円・3年ごとの更新料5,500円受講対象に該当。講座で75%以上の出席が受験資格
まず承継とM&Aの基礎を安く確認したい金融業務2級 事業承継・M&Aコース7,700円なし(受験資格は特にありません)
相続・贈与・自社株・事業承継税制まで体系的に学びたい2級→事業承継シニアエキスパート150,700円(一般区分)2級合格による認定者ルート
第三者承継の実務・企業評価・法務を学びたい2級→M&Aシニアエキスパート150,700円(一般区分)2級合格による認定者ルート
論述を含む試験で説明力も確かめたいM&Aスペシャリスト入会費用38,000円(検定試験料を含む)+年会費33,000円。講座77,000円は任意なし(合格後に入会申請と資格審査)
金融機関の担当者が受ける検定と同じ土俵で基礎を確認したい事業承継アドバイザー3級5,830円なし(どなたでも受験可能)
国の新しい試験に備えたい中小M&A資格試験(創設予定)未公表受験資格は未公表

事業承継士は、社労士にとって受講資格の心配がない唯一の講座型です。講座は全30時間(全5日間)で、常時開催の完全ビデオコース(受講期間4週間)もありますが、映像受講で出席がどう判定されるかは公開情報から確認できませんでした。費用と講座の中身は事業承継士の費用と受講資格で詳しく扱っています。

2級→シニアエキスパートの道は費用が事業承継士の半分以下です。親族内承継の税務か第三者承継の実務かで行き先を選びます。詳しくは事業承継シニアエキスパートとM&Aシニアエキスパートの各記事を参照してください。

05

開業社労士と勤務社労士で変わる見方

開業社労士にとって、資格は事務所として承継・M&Aの相談に応じられることの説明材料になります。ただし、国のM&A支援機関登録制度は個人の資格ではなく機関(法人・個人事業主)を単位とする仕組みです。令和4年1月の制度概要では、対象はFA業務または仲介業務を行う者とされ、デューデリジェンスのみを行う士業等専門家は対象としないと書かれています。資格を取れば事務所が登録できる、という関係ではありません。制度と資格の違いはM&A支援機関登録制度と資格の関係で整理しています。

勤務社労士は、勤務先によって受講資格のルートが変わります。

立場先に確認すること現実的な最初の一手
開業社労士(顧問先から承継相談が来ている)自分で計画づくりまで担うか、専門家につなぐ立場にとどめるか事業承継士か2級。日程と予算で選ぶ
開業社労士(M&Aの仲介・FAにも関わりたい)登録制度の対象業務と、他士業の独占業務との線引き2級→M&Aシニアエキスパート、新試験の公表待ち
金融機関に勤める社労士法人営業の経験年数と在籍要件該当すれば事業承継シニアエキスパートに直接申し込む
会計事務所等に勤める社労士勤務先が「会計事務所等」に当たるかを主催者に確認確認が取れるまでは2級から
一般企業の人事部門に勤める社労士士業ルート・在籍ルートのいずれにも当たらない可能性2級から
06

新しい国の試験と社労士の関係

中小企業庁は、中小M&A支援に必要な倫理観や知識を証明する資格として、中小M&A資格試験を運営主体として実施する予定です。初回となる令和8年度試験の実施事業(令和7年度補正の中小M&A資格試験実施事業)は、株式会社銀行研修社への委託が2026年5月1日に公表されました。募集要領には「仲介者・FA等のM&A専門業者又は支援機関(金融機関、士業等専門家、M&Aプラットフォーム等)に所属する仲介・FA業務に関わる者、並びに今後中小M&Aの仲介・FA業務を行おうとする者を主な受験対象とする。」と書かれています。社労士を名指しした記載はありませんが、士業等専門家という枠は想定に含まれています。

想定は全国のCBT会場で4科目120分・最大60問程度です。2026年10月3日時点で、試験日・受験料・申込方法・正式名称・受験資格はいずれも公表されていません。既存の民間資格を持っていれば新試験が免除・優遇されるという記載も、確認できた公表資料には見当たりません。

もう1つ、社労士が押さえておきたいのが業務範囲との関係です。検討会(第4回)の資料2には、「仲介・FA業務は、各士業の独占業務(弁護士法第72条、税理士法第52条等)に抵触しないことを前提とする」「本資格試験の合格は、既存の業法に基づく独占業務の実施を可能とするものではない」と書かれています。新試験に合格しても、社労士の業務範囲が広がったり、他士業の領域に入れるようになったりするわけではありません。新試験で問われる4科目のうち自分がどこで点を落としそうかは、無料の20問診断で確かめられます(当メディア運営者が提供する無料サービスです)。行政書士の立場から同じ問いを整理した行政書士の事業承継資格もあわせてご覧ください。

07

注意点・よくある失敗

  • シニアエキスパートの案内を「士業なら受講できる」と読んで申し込む。士業ルートに挙がっているのは弁護士・税理士・公認会計士・司法書士(事業承継シニアは中小企業診断士を含む)で、社労士は含まれていません。
  • 3級に合格すれば上位講座に進めると考える。受講資格につながるのは2級合格で得る認定で、3級の合格は受講資格にならないと公式ガイドに明記されています。
  • 事業承継士を受験料9,900円だけで見積もる。費用の中心は講座の330,000円で、取得後も年会費と3年ごとの更新料がかかります。
  • 労務の知識があるから試験も有利だと考える。新試験の想定科目にも2級の分野名にも労務は入っておらず、準備は財務・税務・法務に向かいます。
  • 資格を取れば事務所がM&A支援機関として登録できると考える。登録制度は機関単位で、対象はFA業務または仲介業務を行う者です。
  • 新試験の受験資格や免除を、公表前の情報で決めつける。受験資格・試験日・受験料はいずれも未公表です。
この記事の読み方

比較軸をそろえると、判断理由を説明しやすくなります

選ぶ前に条件を確認することで、料金や印象だけで結論を急ぐことを避けられます。

注意点

制度・料金・提供内容は更新されます

本記事の数値・制度情報は記載の確認日時点のものです。申込前に各公式ページで最新情報をご確認ください。

Long-tail questions

よくある質問

できます。事業承継協会の資格取得講座ページは、受講対象に社会保険労務士を挙げています。取得時の費用は合計350,900円(税込)で、受験資格は講座で75%以上の出席です。

Sources

一次資料・参考資料

Updates

更新・訂正履歴

  1. 初回公開

    記載の数値・制度情報は2026-09-19時点で一次資料・公式情報を確認したものです。更新・訂正時はこの履歴に日付と理由を記載します。

開示

比較と利害関係について

本メディアは「中小M&A資格ナビ」運営者が運営しています。本文中の無料20問診断・無料60問模試へのリンクは、当メディア運営者が提供するサービスです。

開示方針を確認する
次の一歩

読んだ内容を、無料の確認へつなげる

講座や検定に申し込む前に、労務以外の財務・税務・法務・倫理のどこが弱いかを20問で確認できます(当メディア運営者が提供するサービスです)。