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M&Aの企業価値評価はどう勉強する? 資格別の扱いと教材の選び方

先に結論

中小M&Aの企業価値評価は、中小M&Aガイドライン(第3版)の参考資料2にある3つの手法(簿価純資産法・時価純資産法・類似会社比較法)から入り、次にフリー・キャッシュ・フローの計算へ進む順番が、公式資料の並びに沿った学び方です(本記事の整理)。資格や講座によって評価の扱いは「分野名すらない」から「演習まである」まで差があります。教材を買う前に、下の比較表で自分に足りない段階を1つに絞ってください。

この記事の結論

  1. 01

    公式資料の出発点は無料で読める。中小M&Aガイドライン(第3版)の用語集は評価額を「譲渡額を決める際の目安の一つ」と位置づけ、手法は参考資料2「中小 M&A の譲渡額の算定方法」を参照するよう案内している。

  2. 02

    参考資料2が挙げる手法は3つ(簿価純資産法・時価純資産法・類似会社比較法)と、純資産に数年分の利益を加算する方法。DCFやインカムアプローチの語は参考資料2には出てこない。

  3. 03

    既存資格で評価を講義の柱として扱うのは、M&Aシニアエキスパート(企業評価概論・企業評価演習)、M&Aスペシャリストの任意講座(企業価値評価の基礎と実務)、JMAAの養成講座(バリエーションとDD)。金融業務2級・3級は出題分野の名前に評価が入っていない。

  4. 04

    国の新しい試験の検討会資料(現状案)では、「バリュエーション」がM&A実務と財務の両方の項目に置かれ、サンプル問題はフリー・キャッシュ・フローの計算だった。

  5. 05

    教材は「入門→手法→計算→実務」の段階で選ぶ。段階を飛ばして高額講座から入ると、演習の時間に基礎の復習が混ざる。

01

公式資料が示す中小M&Aの評価(最終確認日:2026-10-09)

最初に読むのは市販の本ではなく、中小M&Aガイドライン(第3版)の用語集です。

そのうえで手法は「参考資料2「中小 M&A の譲渡額の算定方法」を参照されたい」とされています。参考資料2の中身を、勉強の観点で並べると次のとおりです。

手法(参考資料2の見出し)公式資料の説明勉強で押さえる点
(1)簿価純資産法「貸借対照表の純資産が株式価値となる手法である。」貸借対照表の純資産の部を読めること
(2)時価純資産法(修正簿価純資産法)資産・負債を時価評価し、簿外資産・負債も加味する。中小M&Aでは不動産や有価証券など一部だけを時価評価する「修正簿価純資産法」を用いるケースも多いどの資産を時価に置き換えると価値が動くか
<参考>純資産に数年分の利益を加算する場合加算する利益の年数は「通常1年~3年」で、事例ごとに異なり交渉で決まるケースが多い年数が交渉で決まる点。計算式の暗記より考え方
(3)類似会社比較法(マルチプル法)類似上場会社のEVと財務指標から評価倍率を求めて算定。算式は「株式価値 = EBITDA × EV/EBITDA 倍率 - 純有利子負債(有利子負債-現預金)」EBITDA(簡易的に「営業利益+減価償却費」)と純有利子負債の計算

注意したいのは、参考資料2に「DCF」「インカムアプローチ」の語が出てこないことです。一方、ガイドライン本文の目次では、公認会計士の支援内容の項に「コストアプローチ(ネットアセットアプローチ)」「マーケットアプローチ」「インカムアプローチ」の3つの見出しが置かれています。参考資料2は、「バリュエーションの手法により算定した株式価値・事業価値を基に譲渡額を交渉するケースが多い」としています。インカムアプローチは公認会計士の支援内容の項で扱われており、まず3手法、次に専門家の領域、という順に読むのが資料の構成に沿った学び方だと本記事は整理しています。

個人に求める水準は、スキルマップ資料(2025年4月)にあります。段階「バリュエーション」の業務内容は「譲り渡し側経営者との面談や提出資料、現地調査等に基づいて、譲り渡し側の企業・事業の評価を行う。」とされています。その中の小項目(バリュエーションの方法、粒度等の説明・検討)では、知識が「バリュエーション手法ごとの特徴、メリット・デメリットに係る知識を保有している(次頁参照)。」、スキルが「対象企業の財務状況や想定される譲り受け側等を鑑みた上で、適切な手法を検討することができる。」とされ、求められているのは計算の速さより「手法を選んで説明できること」です。

比較のあとに

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評価の教材に払う前に、新しい国の試験の4領域(M&A実務/財務・税務/法務/倫理・行動規範)のどこが弱いかを20問で確かめられます(当メディア運営者が提供するサービスです)。

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資格・講座ごとに、評価をどこまで扱うか(最終確認日:2026-10-09)

資格・講座評価に関する公式の記載扱いの深さ(当メディアの整理)費用(税込)
金融業務3級 事業承継・M&Aコース出題分野は「事業承継の事前準備等」「親族内・従業員承継の実務」「社外承継(M&A)の実務」「コンサルティングの実務」分野名に評価はない。用語に触れる程度と考える受験料5,500円
金融業務2級 事業承継・M&Aコース出題分野に「M&A基礎知識・関連会計」。種目別ガイドのページに細目の記載はない会計の分野の中で扱う可能性はあるが、評価の比重は公表されていない受験料7,700円
M&Aスペシャリスト(日本経営管理協会)任意の資格取得支援講座の第4講座が「企業価値評価の基礎と実務」(10:00〜12:00)。出題範囲は「M&A実務」「職業倫理」「法務」「会計」「税務」講座で2時間の単元。検定は論述を含む検定試験11,000円、講座77,000円(任意)
JMAA認定M&Aアドバイザー養成講座のカリキュラムに「第3章 バリエーションとDD」(公式表記)DDと同じ章で扱う講座198,000円(修了試験料込)+入会金・月額会費
M&Aシニアエキスパート3つ目の区分「M&A評価・会計・税務」に「企業評価概論」「企業評価演習」概論と演習が独立した単元。既存資格の中で最も厚い受講料132,000円(通常価格)+受験料11,000円
事業承継シニアエキスパート相続税・贈与税・財産評価・事業承継税制など親族内承継が中心第三者承継(M&A)の企業評価は主題に含まれない受講料132,000円(通常価格)+受験料11,000円
中小M&A資格試験(国・創設予定)検討会資料(現状案)で「バリュエーション」がM&A実務と財務の両方の項目に置かれ、サンプル問題の小項目は「バリュエーションに関する財務知識(フリー・ キャッシュ・フローの計算)」財務・税務は12〜14問程度の想定。評価が何問出るかは示されていない有償の想定。金額は未公表

評価を講義の単元として学べるのは講座型の3つで、検定型の金融業務2級・3級は評価を狙って学ぶ設計になっていません。講座の中身はM&Aシニアエキスパートの費用と受講資格、M&Aスペシャリストの費用と試験の受け方、JMAA認定M&Aアドバイザーの費用と取得条件で扱っています。

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判断表:どこから学ぶか、何を買わないか

今の状態向いている入口向いていない選択
貸借対照表の純資産の部を読んだことがない参考資料2の簿価純資産法から。並行して財務諸表の基礎教材を1冊いきなり企業評価演習のある講座に申し込む
決算書は読めるが、評価手法は名前しか知らないガイドライン用語集→参考資料2の3手法→スキルマップの順に読む手法ごとに別の本を何冊も買う
3手法は説明できるが、計算に自信がないEBITDA・純有利子負債・フリー・キャッシュ・フローの計算演習概論だけの講座をもう1本受ける
受講資格があり、案件で評価を説明する立場M&Aシニアエキスパートの企業評価概論・演習用語レベルの検定から順番に受け直す
新しい国の試験に備えたい4科目のどこが弱いかを先に測り、財務・税務が弱いときだけ評価に時間を割く評価だけを深掘りして、出題割合の大きいM&A実務と倫理・行動規範を後回しにする

避けたいのは、「評価が苦手」と思い込んで評価の講座を買い、実際の弱点は財務諸表の読み方や法務だった、という取り違えです。新しい試験の4領域(M&A実務/財務・税務/法務/倫理・行動規範)のどこで点を落としているかを先に知っておくと、評価に払う額を決めやすくなります。無料の20問診断で当たりをつけられます(当メディア運営者が提供する無料サービスです)。

04

学習段階別の教材の選び方と費用の積み上げ

書籍名ではなく、選ぶ基準を段階ごとに示します。

段階到達目標まず使う公式資料(無料)有料教材を選ぶ基準
1. 入門貸借対照表・損益計算書の項目が読める中小M&Aガイドライン用語集財務諸表の読み方を図で説明し、純資産・有利子負債・減価償却費を扱っているか
2. 手法3手法と利益加算を自分の言葉で説明できる参考資料2、スキルマップ資料中小企業の事例を使い、純資産法と類似会社比較法を両方扱っているか
3. 計算EBITDA・純有利子負債・フリー・キャッシュ・フローを手で計算できる検討会資料のサンプル問題計算過程が省略されていない演習が付いているか。私物の持込みができないCBT(金融業務2級など)を受けるなら、手元の電卓に頼る解き方になっていないか
4. 実務手法を選んだ理由と、評価額が譲渡額と一致しない理由を説明できるガイドライン本文(仲介者・FA、士業等専門家の項)講義と演習がセットか。受講期間と費用が自分の時間に合うか

費用は、公式の数字だけで積み上げると次のようになります。

ルート内訳(税込)合計
公式資料のみガイドライン・参考資料・スキルマップ・検討会資料0円
検定で財務・会計を形にする金融業務2級 受験料7,700円+公式の対応問題集 定価2,200円9,900円
講座で評価の単元を受ける(M&Aスペシャリスト)講座77,000円+入会費用38,000円(検定試験料11,000円はその内数)115,000円(別に年会費33,000円)
講義と演習で体系的に学ぶ(M&Aシニアエキスパート・受講資格あり)受講料132,000円(通常価格)+受験料11,000円143,000円
同・受講資格を金融業務2級で作る場合7,700円+132,000円+11,000円150,700円

段階1〜3は無料の公式資料と基礎教材で進められ、10万円台の支出が意味を持つのは段階4です。教材選び全般の基準はM&A資格のテキストの選び方とM&A資格の講座の選び方にまとめています。

05

8週間の週次計画(平日30分・週末90分の例)

時間は一例です。段階1が済んでいる人は第3週から始めてください。

週テーマやること週末の確認
第1週財務諸表の読み方(簿記の基礎から不安な人はM&A資格と簿記の2〜3週目を先に)貸借対照表の純資産・有利子負債・現預金に印をつける自社か公開されている決算書で純資産を読み上げる
第2週損益計算書営業利益と減価償却費の位置を押さえるEBITDAを簡易式で出す
第3週公式資料の通読ガイドライン用語集と参考資料2を読む3手法を各3行で書く
第4週純資産法簿価純資産と、修正簿価純資産の違い不動産を時価に置き換えたら価値がどう動くかを説明する
第5週利益加算と類似会社比較法利益加算の年数、EV/EBITDA倍率、純有利子負債算式に数字を入れて計算する
第6週フリー・キャッシュ・フロー計算の構成要素を整理する電卓なしで構成要素を言えるか確認
第7週スキルマップバリュエーション段階の業務・知識・スキルを読む「なぜこの手法を選ぶか」を1分で話す
第8週総点検苦手な段階を1つ特定する有料教材は段階に合う1つだけ買う

M&Aシニアエキスパートを受講する人は、Web講義の利用期間が決済完了日から13週間で、企業評価概論・演習は3つ目の区分(最後の区分)に置かれています。上の8週間を受講前に済ませておくと、講義の時間を演習に回せます。講義の進め方はM&Aシニアエキスパート Web版 13週間の進め方で扱っています。

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教材を買う前の自己チェック

次のうち3つ以上当てはまるなら、評価の教材を買う前に「どこが本当の弱点か」を確かめたほうが、支出を小さくできます。

  • 貸借対照表の純資産と、有利子負債・現預金の位置をすぐに指させない
  • 簿価純資産法と時価純資産法の違いを説明できない
  • 評価額がそのまま譲渡額になると思っていた
  • EV/EBITDA倍率を使った算式を書けない
  • 評価のほかに、法務や倫理・行動規範にどれだけ時間が要るか分からない
  • 講座の比較を、受講料の高い順・安い順でしか見ていない
  • 新しい国の試験でどの科目が弱いか、測ったことがない

迷いが残るなら、実際に解いて確かめるのが早道です。教材に払う前に、新しい試験の4領域のどこが弱いかを無料の20問診断で確認できます(当メディア運営者が提供する無料サービスです)。財務・税務以外が弱いと分かれば、評価の教材は後回しにできます。

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注意点・よくある失敗

  • 参考資料2を読まずに市販書から入り、参考資料2が挙げる3手法と、それ以外の手法の位置づけを区別できなくなる。
  • 評価額をそのまま譲渡額と考える(参考資料2は「必ずそのまま譲渡額となるわけではなく」と書いています)。
  • 評価だけを深掘りし、出題割合の大きいM&A実務や倫理・行動規範を後回しにする(新試験の出題割合の想定はM&A実務35〜40%程度、倫理・行動規範25%程度)。
  • 受講資格を確かめずに企業評価演習のある講座を検討する(M&Aシニアエキスパートは6つのルートのいずれかに該当する必要があります)。
  • 年会費や月額会費を見込まずに、入会が伴う講座型の資格を選ぶ。
  • 計算機を持ち込める前提で計算を練習する(金融業務2級・3級は自席への私物の持込みが認められていません)。

よくある質問

評価を講義の単元として扱うのは、M&Aシニアエキスパート(企業評価概論・企業評価演習)、M&Aスペシャリストの任意講座(企業価値評価の基礎と実務)、JMAAの養成講座(バリエーションとDD)です。評価そのものの資格ではなく、M&A実務全体の中の1単元という位置づけです。

公式資料だけなら0円、金融業務2級と公式の対応問題集なら9,900円、M&Aスペシャリストの講座と入会費用で115,000円、M&Aシニアエキスパートで143,000円(受講資格を2級で作るなら150,700円)です。

中小M&Aガイドラインの参考資料2にはDCFの語が出てきません。ただし検討会資料(現状案)のサンプル問題はフリー・キャッシュ・フローの計算で、ガイドライン本文の公認会計士の項にはインカムアプローチの見出しがあります。3手法を説明できるようになった後に、フリー・キャッシュ・フローの計算まで進めておくのが無理のない範囲です。

検討会資料の現状案では、「バリュエーション」がM&A実務と財務の項目に置かれています。何問出るかは示されておらず、試験日・受験料も未公表です。評価に偏らず4科目の現在地を測るなら、無料の20問診断が使えます(当メディア運営者が提供する無料サービスです)。

公式資料で扱う3手法は、純資産を読む・倍率を掛けるという考え方が中心です。つまずきやすいのは計算より前の財務諸表の読み方なので、段階1を飛ばさないことが近道になります。

一次資料・参考資料

更新・訂正履歴

  1. 初回公開

    公開時に、記載の数値・制度情報を一次資料・公式情報で確認しました。

開示

比較と利害関係について

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