先に結論
事業承継の資格は、誰でも受けられる検定(5,500〜7,700円)と、受講資格のある講座型の認定(14万〜35万円程度)に分かれます。入門は金融業務3級か事業承継アドバイザー3級、標準は事業承継・M&Aエキスパート(2級)、上級は事業承継シニアエキスパートと事業承継士です。M&Aによる第三者承継まで支援するなら、2026年度創設予定の中小M&A資格試験も候補に入ります。目的と今の立場から、下の表で選んでください。
この記事の結論
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事業承継の資格は「誰でも受けられるCBT検定」と「受講資格が必要な講座型の認定」の2種類に分かれ、費用の桁が違う。
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誰でも受けられるのは金融業務3級・2級の事業承継・M&Aコースと、事業承継アドバイザー3級。いずれも通年のCBT。
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上級の2資格は、事業承継シニアエキスパートが金融機関・士業など、事業承継士が士業など国家資格の保有者を主な対象にしている。
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親族内・従業員承継の支援が中心なら承継系の資格、M&Aによる第三者承継まで扱うなら中小M&A資格試験を軸にする。
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どの資格を取っても、税務相談などの士業の独占業務ができるようになるわけではない。資格は知識の証明で、業務の許可ではない。
事業承継の資格一覧(6資格の比較表)
| 資格 | 実施・認定 | 取得時の費用(税込) | 形式 | 受験・受講の条件 | 合格基準 | 確認日 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 事業承継・M&Aベーシック(金融業務3級 事業承継・M&Aコース) | 金融財政事情研究会 | 受験料5,500円 | CBT通年・100分・四答択一式50問 | 制限なし | 100点満点で60点以上 | 2026-09-16 |
| 事業承継アドバイザー3級 | 銀行業務検定協会 | 受験料5,500円+事務手数料330円 | CBT・120分・50問(基本知識40問/技能・応用5事例10問) | どなたでも受験可能 | 100点満点中60点以上 | 2026-09-22 |
| 事業承継・M&Aエキスパート(金融業務2級 事業承継・M&Aコース) | 金融財政事情研究会 | 受験料7,700円 | CBT通年・120分・四答択一式30問+総合問題10題 | 制限なし | 100点満点で70点以上 | 2026-09-28 |
| 事業承継シニアエキスパート | 金融財政事情研究会(認定) | Web講義132,000円+受験料11,000円(一般区分) | Web講義→CBT・四答択一式50問・120分 | エキスパート等の認定者、士業、金融機関で法人営業1年以上 等 | 100点満点で60点以上 | 2026-09-20 |
| 事業承継士 | 事業承継協会 | 受講料330,000円+受験料9,900円+入会金11,000円 | 全30時間の講座→試験→入会審査 | 国家資格などの専門スキル保有者が原則 | 60点以上(入会資格として) | 2026-09-30 |
| 中小M&A資格試験(創設予定) | 中小企業庁(試験の実施は株式会社銀行研修社に委託) | 未公表(有償を想定) | CBT・120分・最大60問程度(想定) | 未公表 | 総得点の70〜80%程度を想定し、初回は相対評価 | 2026-09-30 |
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取得時と維持で、費用の総額を比べる
受験料だけで比べると、講座型の資格の実際の負担が見えません。取得時にかかる合計と、取得後に毎年かかる費用を分けて並べました。
| 資格 | 取得時の合計(税込) | 取得後の維持費 |
|---|---|---|
| 事業承継・M&Aベーシック(3級) | 5,500円 | 確認した公式ページに記載なし |
| 事業承継アドバイザー3級 | 5,830円 | 確認した公式ページに記載なし |
| 事業承継・M&Aエキスパート(2級) | 7,700円 | 確認した公式ページに記載なし |
| 事業承継シニアエキスパート | 143,000円(受講資格がなければ2級の7,700円が前段にかかる) | 確認した公式ページに記載なし |
| 事業承継士 | 350,900円 | 年会費11,000円+3年ごとの更新料5,500円 |
| 中小M&A資格試験 | 未公表 | 合格後の登録・更新講習が検討されている(費用は未公表) |
事業承継士は、合格後に事業承継協会へ入会して資格を名乗る仕組みのため、年会費が続きます。中小M&A資格試験は、合格者の登録と、登録時・更新時の講習を組み合わせる制度が検討されています。詳しくは中小M&A資格の登録・更新で整理しています。
段階で見る:入門・標準・上級
事業承継の資格は、次の3段階で捉えると位置関係がはっきりします。
- 入門:事業承継・M&Aベーシック(3級)、事業承継アドバイザー3級。用語と全体像を一巡する段階。5,500円前後で受けられる
- 標準:事業承継・M&Aエキスパート(2級)。税制・法制が独立した分野になり、総合問題が加わる。上位講座の受講資格にもなる
- 上級:事業承継シニアエキスパート、事業承継士。講座の受講が前提で、受講資格が決められている
注意したいのは、入門の金融業務3級に合格しても、上位の養成スクールの受講資格にはならない点です。金融財政事情研究会の3級の種目別ガイドには、3級の合格はM&Aシニアエキスパートと事業承継シニアエキスパートの養成スクールの受講資格にならないと明記されています。受講資格の一つとして案内されているのは、2級合格による事業承継・M&Aエキスパートの認定です(事業承継シニアエキスパートの講座ページ)。上級を目指すなら、3級を飛ばして2級から受ける判断もあります。3級の仕様は金融業務3級 事業承継・M&Aコースの難易度と受験料、2級の仕様は金融業務2級 事業承継・M&Aコースの難易度で確認できます。
目的別の選び方
| 目的 | 候補 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 承継の相談に共通言語で応じたい(金融機関の渉外・融資担当など) | 3級 → 2級 | 金融業務2級の中身と難易度 |
| 上位の認定までのルートを作りたい | 2級 → 事業承継シニアエキスパート | 事業承継シニアエキスパートの費用と受講資格 |
| 士業として承継支援を事務所のメニューにしたい | 事業承継士、事業承継シニアエキスパート | 事業承継士の費用と受講対象 |
| M&Aによる第三者承継まで支援したい | 中小M&A資格試験(創設予定) | 無料の20問で新試験の科目別の現在地を測る |
| 金融機関で事業承継とM&Aの両方を担当する | 2級で基礎、中小M&A資格試験でM&A側 | 銀行員・金融機関のM&A資格 |
親族内承継と第三者承継で、学ぶ中身が変わる
事業承継の支援は、大きく2つに分かれます。親族や従業員に引き継ぐ承継では、相続・贈与、自社株の評価、事業承継税制の比重が高くなります。社外の第三者に引き継ぐ承継、つまりM&Aでは、相手探し、企業価値の評価、契約、支援者としての倫理が中心になります。
承継系の資格は前者まで含めた広い設計です。たとえば事業承継士の講座は、30時間のうち科目名にM&Aを掲げた枠が1時間で、中心は親族内承継の実務です。一方、中小M&A資格試験は第三者承継(M&A)の支援に特化し、「M&A実務」「財務・税務」「法務」「倫理・行動規範」の4科目を想定しています。自分が支援したい場面がどちらに寄っているかを決めることが、資格選びの最初の一歩です。
資格と「登録・認定制度」は別のもの
事業承継の支援を調べていると、資格と似た言葉の制度に出会います。混同しやすいので整理しておきます。
- M&A支援機関登録制度:中小企業庁の制度で、登録の単位は法人・個人事業主などの「機関」です。個人が資格を取れば登録できる仕組みではありません。詳しくはM&A支援機関登録制度と資格の関係をご覧ください。
- 士業の独占業務:中小企業庁の検討会資料は、仲介・FA業務について「各士業の独占業務(弁護士法第72条、税理士法第52条等)に抵触しないことを前提とする」と記しています。事業承継の資格を取っても、税務相談や法律事務ができるようになるわけではありません。
経営者・後継者本人に資格は必要か
自社の承継を考えている経営者や後継者は、資格を取る必要はありません。必要なのは、支援を頼む相手を見極める知識です。中小企業庁の中小M&Aガイドライン(第3版)は、支援機関が守るべき事項を公表しており、無料で読めます。後継者の学びの入口として受けるなら、5,500円前後の入門の検定が費用の面で始めやすい選択肢です。
注意点・よくある失敗
- 上級資格の受講資格を確かめずに計画する(士業や、金融機関での法人営業の経験年数などの条件があります)。
- 入門の3級に合格すれば上位講座に進めると思い込む(受講資格になるのは2級の認定です)。
- 講座型の費用を受講料だけで見積もる(受験料・入会金・年会費が別にかかる資格があります)。
- 「事業承継の資格=相続対策の資格」と考え、M&Aによる承継の学習を落とす。
- 名前の似た資格を、実施団体を確かめずに申し込む。
- 出所の書かれていない合格率を、難易度の根拠にする。
よくある質問
受験資格がなく通年のCBTで受けられる、金融業務3級 事業承継・M&Aコース(5,500円・60点以上で合格)と事業承継アドバイザー3級(5,500円+事務手数料330円・60点以上で合格)が入口です。合格率はどちらも公表されていないため、「取りやすさ」は受験の条件と合格基準、出題の構成から判断してください。
実施団体が異なる別の制度で、公式な上下関係はありません。事業承継士は士業など国家資格の保有者が原則の対象で、取得時の合計は350,900円です。事業承継シニアエキスパートは金融機関の法人営業経験1年以上なども対象に含み、一般区分の合計は143,000円です。対象者と費用で選んでください。
できません。税務相談は税理士の独占業務です。資格は支援に必要な知識の証明であり、業務の許可ではありません。
承継相談の入口対応が中心なら、2級(7,700円)で十分な場面が多くあります。上位の認定まで進むなら、2級の合格で事業承継シニアエキスパートの受講資格を得られます。M&Aの案件にも関わるなら、中小M&A資格試験の準備を並行して始めると、両方の知識がつながります。
M&Aによる第三者承継の支援に特化した試験で、事業承継の支援のうち社外への引継ぎを担う人が主な対象です。2026年9月30日時点で、試験日・受験料・受験資格は未公表です。試験の実施事業は株式会社銀行研修社への委託が決まっています(2026年5月1日公表)。
後継者教育として承継の全体像をつかむ目的なら、入門の検定が始めやすい選択肢です。ただし目的は資格ではなく、承継のプロセスを理解することに置いてください。
一次資料・参考資料
- 公式情報金融財政事情研究会 種目別ガイド 金融業務3級 事業承継・M&Aコース確認日:
- 公式情報金融財政事情研究会 種目別ガイド 金融業務2級 事業承継・M&Aコース確認日:
- 公式情報金融業務2級3級 事業承継・M&Aコース(CBT-Solutions)(1)確認日:
- 公式情報金融業務2級3級 事業承継・M&Aコース(CBT-Solutions)(2)確認日:
- 公式情報銀行業務検定試験 CBT種目一覧(CBT-Solutions。事業承継アドバイザー)確認日:
- 公式情報金融財政事情研究会 KINZAI Webアカデミー 事業承継シニアエキスパート確認日:
- 公式情報金融財政事情研究会 事業承継・M&A(認定制度の段階)確認日:
- 公式情報日本M&Aセンター M&Aエキスパート認定資格(各認定の位置づけ)確認日:
- 公式情報一般社団法人事業承継協会 ごあんない(入会金・年会費)確認日:
- 公式情報一般社団法人事業承継協会 資格取得講座確認日:
- 一次資料中小企業庁 中小M&A資格試験実施事業 委託先の採択結果(2026年5月1日)確認日:
- 一次資料中小企業庁 中小M&A資格試験実施事業 企画競争募集要領(2026年3月27日)確認日:
- 一次資料中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(第4回検討会 資料2・2026年3月17日)確認日:
- 一次資料中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」確認日:
- 一次資料M&A支援機関登録制度 公式サイト確認日:
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